美月　就学について　その2

問題の山積
12月25日、夕刻。
この日、ちょっとした油断から、シュウトも風邪を引き、ミツキにいたっては40度の高熱が出ている状態だった。しかし、この日だけはもうはずせないだろう。直感から、おばあちゃんに来てもらってみてもらい、お父さんと『いざ・出陣』気分的にも背水の陣で、ひくにひけないという気持ちだった。

顔を合わせての話あいというのは、微妙なニュアンスも伝わり、やはりコミュニケーションはこれに尽きると思う。
この日。再確認のまた確認。電話ではチラホラ出てきていた違う方向が示される。

一つ目は、地域外の肢体クラスへの就学。
お隣と、二つ隣の学区にすでに肢体クラスがあったため、希望があればそちらはどうか、という。何故今頃になってからの情報なのか。今でも疑問。確かに通学距離という問題からは、いい条件のように思えた。しかし・・・今日の今、返事ということであれば、検討する時間も足りない。また、地域の学校を希望する理由には、兄弟が同じ学校に通うというメリットも考えてのことでは、魅力的ではあるけれど、受け入れがたい。
二つ目は、「なかよしクラス」への配置。
ここまで来たら、「このあたりでどうですか」という感触だった。穏便に済まそうと思えば、折り合えるラインともいえる。
心配だったのは、介助をお願いできるかどうか。加配措置はとれるか、という点。今更ながら、全介助のミツキを見てもらうとなれば、大人の配置が重要だった。
答えは「NO」特別な加配は望めない。従って、安心という点から、「なかよし」は難しい。
三つ目。普通クラスへの配置。
・・・新しい特殊学級を興すくらいなら、こちらの方が「簡単」なのだそうだ。でも、普通クラスで何を学ぶのだろう。また、なかよしクラス以上に介助の手は望めない。
四つ目。県の訪問学級への所属。
つまり、自宅に先生が来てくれて授業をするという。体の弱いお子さんが受ける措置だそう。
確かに健康状態が心配で・・・という理由だが、療育園生活ができる彼女にとってみれば、「籠の鳥」では、あまりに酷な選択だろう。

ひとつずつの可能性を話し合ったものの、肝心なポイントは少しずつずれたまま、話し合いが続く。
さらに、問題は先日言われたとおりの、新設申請においての難しい確率と、もし、新設出来なかった時の覚悟みたいなものの話になっていった。
すなわち、
結果が出た時点で、養護学校に希望変更を出しても、受け入れはできるが、クラス編成などが終わってしまっているので、担任・介助員などの手が足らなくなるというのだ。
「その時は同級のお友達に迷惑がかかる・・・」
本当に胃がキリキリした。誰だって自分の子供に不利なコトになるなんて、願うわけがない。うちがいらんコトを言い出したばかりに・・・・ということになるのか。
沈黙・・・・

「お父さん、何か質問はありませんか」
彼はあっさり「無い｣と言った。
ああ、そうか。四の五の言っても始まらないんだ。
「養護学校を否定してるわけではありません。地域小へ入るだけを願っているわけでもなく、ミツキ本人の通学の身体的負担を考えたときに、肢体クラス新設をお願いしたいんです。新設が不可になった時はその時点で考えます。」
論点はそこに絞られた。
市教委の方も、長時間の話し合いの中で、こちらの意図を仕方なし、と受け止められたようであった。

就学通知書
お世話になった方々に、中間報告を兼ねて連絡をした。反応は様々だったけれど、その後、いろいろな形でご協力いただけけたのは、大変ありがたく思っている。

私たちとしては「やれるだけのこと・言うだけのことは言った」という気持ちだった。
回答は3月頃になる、と言われていたので、あとは「待つだけ」になった。

1月、アデノイド除去手術のため入院。(手術についてはまた、別ページで・・・)
2月、最後の単独通園月とあって、親子とも満喫するべく、順調に通園を続ける。・・・それだけ、術後、美月に体力がついてきた。大変な思いをしたけれど、やっぱり思い切ってやってよかった。
周囲の年長児が、そろそろ「就学についての説明会」なるものの案内がきていた。わかっていたけれど、おいてけぼりの感は否めない。少しのあせり・辛抱・・・

そんな2月の終わりのこと。電話があった。
「美月さんの就学についてですが、H小学校に肢体クラスの新設が認可されました」
心の準備ができていない・・・え・・え?!
「それは、ここの小学校に入学、ということですか?｣
｢そうです」

用件だけの電話。切った後もしばし呆然・・・・
じわじわと先ほどの言葉が浸透してくる。入学・・・決まったんや・・・!!!
お風呂に入っていたお父さんに、あわてて報告した。
「電話、来たよ。H小学校肢体、決定やって!!」
「そうか!・・・・」
彼もその後、しばらく言葉が無かった。

4～5日して、就学通知書が送られてきた。『就学先・H小学校』
美月の名前が入っている。これをもらうために、半年やってきたんだなあ。正直、確率は半々・・・とも思っていたので、意外。といえば応援してくれた方々に失礼になるかな。でもそう思っていた。
だから、一瞬「これは大変なことになった」と、うれしい反面、大変な責任がかかってきたような気がしてきた・・・本当にうれしい気持ちと、不安が一気に押し寄せてきたのだ。そんな時にも励ましてくれたのは、園の先生や保育園に進路を決めたお友達。・・・初めての環境。一人だけになる不安。それはあって当然。みんな何かしらそれを抱えて、新しい進路にすすんでいく・・・
美月は希望した道に切り開かれたのだ。やってみよう。一人のクラスなら、思いっきり美月のカラーが出せるはず・・・いただいたチャンスを大切に使おう。・・・それにまだ入学にはひと月ももあるしね。ゆっくり準備すればいいや。そう思うと気楽になった。

後日、美月を可愛がってくれたおじいちゃんの仏壇に、通知書のコピーを供え、報告に行った。